停電時の食事を考えるとき、見落としやすいのが「調理そのものに電気が要る」という点です。ごはんを炊く、湯を沸かす。普段は意識しないこの2つが、ポータブル電源の電池をどれだけ使うのかは、容量(Wh)の数字だけでは分かりません。

調理家電は「何時間使うか」ではなく「1回で何Wh使うか」で数えるのが実態に合います。この記事では、炊飯と湯沸かしを「Wh/回」に換算し、容量帯ごとに「何回分できるか」を逆算します。あわせて、湯が必要な保存食を食べる場合に、電源の消費がどれだけ上乗せされるかも計算例で示します。

なお、備蓄する食料の総量(何人分を何日分か)は別の記事で「人数×日数」で計算しています。本記事は、その総量に「調理分の電源」をどう上乗せするかだけを扱います。

家族の人数で変わる備蓄の量|水・食料・電源を『人数×日数』で計算する

この記事の結論|調理家電は『定格出力オーバー』が一番多い失敗です

炊飯器は炊飯時1,200W(1.0L)/1,400W(1.8L)、電気ケトルは850Wで、容量が足りても定格出力500Wの500Wh帯では使えません。

調理までカバーするなら、まず定格1,500W級以上の機種が前提です。1台ずつ順番に使う標準の1台は、Jackery ポータブル電源 1000 New(119,800円)です。

湯沸かしは1Lで約108Wh、炊飯は1回167Wh(1.0L)/225Wh(1.8L)なので、1,000Wh帯で炊飯約5回・湯沸かし約8回分、2,000Wh帯で炊飯約10回・湯沸かし約16回分が目安です。

湯を使わない・加熱なしで食べられる食品と分担すれば、湯沸かしの上乗せ分を抑えられます。

当サイトは実機を持たず、メーカー公表値と公的資料をもとに計算しています。載せている使用時間は公表値からの逆算で、実測ではありません。

先に結論|容量帯ごとに「何回調理できるか」の早見表

計算式「利用可能量 = 容量(Wh)× 0.85」で求めた容量帯別の目安です(計算方法の詳細は次章)。炊飯は1回あたりの消費電力量、湯沸かしは1Lを沸かす1回分で換算しています。

調理(1回あたりの電力量)約500Wh帯(利用可能量 約435Wh)約1,000Wh帯(同 約870Wh)約2,000Wh帯(同 約1,740Wh)
炊飯 1.0L(167Wh/回)定格出力500Wのため使用不可約5回約10回
炊飯 1.8L(225Wh/回)定格出力500Wのため使用不可約3回約7回
湯沸かし 1L(約108Wh/回)定格出力500Wのため使用不可約8回約16回

500Wh帯は、エネルギー量だけ見れば炊飯約2回・湯沸かし約4回分に相当しますが、炊飯器(炊飯時1,200W〜1,400W)と電気ケトル(850W)の消費電力が定格出力500Wを超えるため、実際には動かせません。調理に電源を使う計画は、1,000Wh帯(定格出力1,500W級)からが計算の出発点になります。

また、この表は「電池を調理だけに使った場合」の回数です。冷蔵庫や照明と電池を分け合う実際の停電では、調理に回せる回数はこれより少なくなります。家電全体の使用時間の早見表は、こちらの記事にまとめています。

ポータブル電源は何時間使える?500Wh・1000Wh・2000Wh別に家電の使用時間を逆算

計算方法|調理は「Wh/回」で数える

炊飯器や電気ケトルは、短時間に大きな電力を使う家電です。消費電力(W)に使用時間を掛ける通常の計算よりも、メーカーが公表する「1回あたりの消費電力量(Wh)」をそのまま使う方が、回数の見積もりに直結します。

容量側の考え方は他の記事と同じで、電池の全量は使い切れない前提で利用可能量を見積もります。

利用可能量(Wh)= バッテリー容量(Wh)× 0.85
調理できる回数 = 利用可能量 ÷ 1回あたりの消費電力量(Wh)(端数は切り捨て)

計算方法について
本記事の使用可能時間は「バッテリー容量(Wh)× 0.85 ÷ 家電の消費電力(W)」で計算した目安です。0.85は、直流から交流への変換ロスなどを見込んだ当サイト独自の推定係数で、メーカーの保証値ではありません。実際の使用時間は、気温、バッテリーの使用年数、家電の設定や使い方、同時使用の有無によって変わります。特に冷蔵庫のようにコンプレッサーがON/OFFを繰り返す家電は消費電力の幅が大きく、計算結果にも幅が出ます。停電への備えとしては、短い方の見積もりを前提に計画することをおすすめします(安全性を保証するものではありません)。

炊飯|1回あたり167Wh(1.0L)/225Wh(1.8L)

炊飯器の1回あたりの消費電力量は、パナソニック公式の取扱説明書に仕様として載っています。IHジャー炊飯器(SR-PBシリーズ)の場合、炊飯1回あたり 167Wh(1.0Lタイプ)/225Wh(1.8Lタイプ) です。炊飯時の消費電力は1,200W(1.0L)/1,400W(1.8L)で、短時間に大きな電力を使う代わりに、1回分の総量はこの程度に収まります。

この数字で割ると、容量帯ごとの炊飯回数は冒頭の表の通りです。1,000Wh帯なら1.0Lの炊飯が約5回分。1日1回の炊飯なら単純計算で約5日分に相当しますが、これは電池を炊飯だけに使った場合の話です。

注意点は定格出力です。炊飯時の1,200W/1,400Wをまかなうには、定格出力がそれを上回る機種が必要です。当サイトで確認している1,000Wh帯・2,000Wh帯の機種は定格1,500W以上ですが、500Wh帯(定格500W)では炊飯器は動きません。電子レンジを含め、他の高出力家電がどの機種で使えるかは判定表にまとめています。

ポータブル電源で電子レンジは使える?定格出力で判定する早見表

ポータブル電源(1,000Wh帯)

湯沸かし|1Lを沸かす1回分は約108Wh

電気ケトルは製品によって消費電力が異なります。当サイトの家電表では、Jackery公式FAQの使用例にある 850W をケトルの目安としています。一方、実際に販売されている家庭用ケトルは1,250W前後の製品も多くあります。

ここで大切なのは、W数が違っても「1回分のWh」は大きく変わらないことです。湯沸かしは、電力が大きいほど速く沸く代わりに時間が短くなるため、1回あたりの電力量は水の量でほぼ決まります。裏付けとして、象印の電気ケトル(1.0L、湯沸かし時消費電力1,300W)は、メーカー公式資料で満水時の沸とう時間が約5分とされています。1,300W × 約5分 ≒ 約108Wh。水1Lを室温から沸騰させるのに必要な熱量(約93Wh)に、放熱などのロスを加えた数字とも整合します。

この約108Whを「1L沸かす1回分」として計算すると、850Wのケトルでは沸騰まで約7〜8分かかる計算になり、回数は冒頭の表の通り、1,000Wh帯で約8回分・2,000Wh帯で約16回分です。自宅のケトルのW数が850Wと違っても、回数の見積もり自体はこの表がそのまま目安になります(沸くまでの時間だけが変わります)。なおケトルも消費電力が定格出力を超えれば使えない点は炊飯器と同じで、500Wh帯では850Wのケトルは動かせません。

保存食と合わせる|「湯の量 × 回数」が電源の上乗せ分になる

保存食の中には、調理に湯が必要なタイプがあります。アルファ米、カップ麺、フリーズドライのスープや味噌汁などです。これらを停電中に食べるなら、食料の備蓄量とは別に「湯を沸かす分の電源」が上乗せで必要になります。

計算例1: アルファ米だけの日(4人家族)

アルファ米は、1食あたり 160ml のお湯(または水)を注いで戻す製品です(尾西食品のアルファ米、販売ページの製品仕様で確認)。4人家族が1日3食すべてアルファ米でまかなうと仮定すると、必要な湯の量は次の通りです。

  • 湯の量: 160ml × 4人 × 3食 = 1,920ml ≒ 約1.9L/日
  • 湯沸かしの電力: 1L分(約108Wh)を2回分として 約216Wh/日
  • 3日分では 約648Wh。これは1,000Wh帯の利用可能量(約870Wh)の約7割強にあたります

つまり「湯で戻す保存食」を主食に据える日数分は、湯沸かしだけでかなりの電池を使います。湯を沸かす回数を数えることが、そのまま電源計画の一部になるということです。

計算例2: 炊飯と湯沸かしを組み合わせた1日(2人世帯/4人家族)

炊飯できる世帯では、炊き立てのごはんと湯を使う食品を組み合わせる形も考えられます。

モデル1日の調理内容調理分の電力1,000Wh帯(約870Wh)2,000Wh帯(約1,740Wh)
2人世帯炊飯1.0L×1回(167Wh)+湯1L×1回(約108Wh)約275Wh/日調理だけで約3日分調理だけで約6日分
4人家族炊飯1.8L×1回(225Wh)+湯1L×1回(約108Wh)約333Wh/日調理だけで約2.6日分調理だけで約5.2日分

いずれも「調理だけに電池を使った場合」の日数です。冷蔵庫などを同時に動かせば、その分だけ調理に回せる日数は短くなります。自宅の1日分の総量(調理+その他の家電)は、ワークシート形式で計算できる記事③の方法と組み合わせて見積もってください。

家族の人数で変わる備蓄の量|水・食料・電源を『人数×日数』で計算する

湯が要らない選択肢も分担に入れる

電源の節約という点では、湯を使わない食品との分担も有効です。アルファ米は水でも戻せる製品で、販売ページの仕様では「お湯で15分、水で60分」が調理時間の目安とされています。缶詰やレトルト食品のように加熱なしで食べられるものを混ぜると、湯沸かしの回数そのものを減らせます。「何日分を、どの調理方法の食品でまかなうか」を先に決めると、必要な湯の量と電源の上乗せ分が決まります。

保存食(湯で戻すタイプ)

ポータブル電源(2,000Wh帯)

注意点|回数の計算で見落としやすいこと

  • 定格出力が先、容量は後: 炊飯器(1,200W〜1,400W)とケトル(850W〜)は、容量が余っていても定格出力が足りなければ動きません。調理用途では、まず定格1,500W級以上の機種が前提です。
  • 同時使用は合算される: 炊飯中にケトルを併用すると、消費電力は単純に足し算になります。定格出力を超える組み合わせは避け、調理は1台ずつ順番に行う前提で計画してください。
  • 回数は「調理だけ」の上限値: 本記事の回数・日数は電池を調理専用に使った場合の計算です。冷蔵庫のように止めにくい家電と併用する場合は、そちらの消費を差し引いて考えてください。
  • 保温は別計算: 炊飯器の保温や電気ポットの保温を続けると、その間も電力を消費します。本記事の「1回分」には保温分を含めていません。

まとめ

  • 調理は「時間」ではなく「Wh/回」で数えます。炊飯は1回167Wh(1.0L)/225Wh(1.8L)、湯沸かしは1Lで約108Whが計算の物差しです。
  • 回数に直すと、1,000Wh帯で炊飯(1.0L)約5回・湯沸かし約8回分、2,000Wh帯で炊飯約10回・湯沸かし約16回分です(電池を調理だけに使う場合)。500Wh帯は定格出力が足りず、炊飯器もケトルも使えません。
  • 湯が必要な保存食は、湯量×回数の分だけ電源を上乗せで使います。4人家族がアルファ米(1食160ml)で3食まかなうと湯沸かしだけで約216Wh/日です。水で戻せる・加熱なしで食べられる食品と分担すると、上乗せ分を抑えられます。
  • 備蓄の総量そのものは記事③の「人数×日数」の計算で決め、本記事の調理分はその電源見積もりへの上乗せとして扱ってください。

出典

  • 炊飯器の1回あたり消費電力量(167Wh/225Wh)・炊飯時消費電力(1,200W/1,400W): パナソニック公式 取扱説明書 SR-PBシリーズ仕様表 https://panasonic.jp/manualdl/p-db/sr/sr-pb3_01.pdf
  • 電気ケトル850Wの目安: Jackery公式 各製品ページFAQの家電使用例 https://www.jackery.jp/products/explorer-1000-new / https://www.jackery.jp/products/explorer-2000-new
  • 湯沸かし1L≒約108Whの裏付け(1.0L・湯沸かし時消費電力1,300W・満水時の沸とう時間約5分): 象印公式製品資料(電気ケトル CK-KA10、メーカー公式ページ・取扱説明書に基づく仕様値)
  • アルファ米1食あたりの注水量160ml・調理時間の目安(お湯15分/水60分): 尾西食品 アルファ米の販売ページ製品仕様(アスクル商品ページ「作る際に注ぐ水の量は160ml」メーカー確認情報、および楽天市場の製品仕様) https://www.askul.co.jp/p/9523086/
  • 計算方法(容量×0.85): 当サイト独自の推定係数。考え方の参考として BLUETTI公式(EU)製品ページFAQの稼働時間の目安式 https://fr.bluettipower.eu/pages/ac180

※公表値・仕様はいずれも2026年10月24日時点で確認した内容です。実際の製品の仕様や調理方法は、各製品の表示・取扱説明書で確認してください。