ポータブル電源を日常使いすると電気代はどうなる?充電コストとピークシフトの損得を計算
停電対策で買ったポータブル電源を、普段も使えば節電になるのでは——そう考える場面があります。「夜の安い電気で充電して、昼に使えば差額が浮く」という発想もよく見かけます。
この記事では、その損得を数字で逆算します。満充電にかかる電気代、変換ロスを差し引いたあとの「実効単価」、時間帯別料金プランでのピークシフト試算までを順に計算し、電気代の面で日常使いに意味があるのかを整理します。先に方向だけ書くと、計算結果は節約寄りにはなりません。ただ、満充電のコスト自体は思ったより小さい、というのも同時に分かる数字です。
なお、本記事の金額はすべて計算上の目安です。前提(単価・効率)は次章に明記しています。
この記事の結論|電気代の節約目的では、計算が合いません
・ポータブル電源経由の電気は、充電と放電のロスで実効単価が約43円/kWh。コンセントから直接使う(31円/kWh)より約1.4倍の計算です
・夜に充電して昼に使うピークシフトも、試算ではほぼトントン〜わずかにマイナスでした
・買うなら理由は「停電時に家電を動かせる備え」のほうです。備えとして1台置くなら、容量と価格のバランスで Jackery ポータブル電源 1000 New(119,800円)が基準になります。満充電の電気代は約39円の規模です
当サイトは実機を持たず、メーカー公表値と公的資料をもとに計算しています。載せている使用時間は公表値からの逆算で、実測ではありません。
先に結論|電気代の節約目的では、計算が合いにくい
- 満充電の電気代そのものは小さい。約500Wh帯で約19円、約1,000Wh帯で約37〜39円、約2,000Wh帯で約75円(目安単価31円/kWhで計算)
- ただし充電と放電の両方でロスが出るため、ポータブル電源経由の電気の実効単価は約43円/kWh。コンセントから直接使う場合(31円/kWh)の約1.4倍になる計算です
- 時間帯別プラン(東京電力「夜トク8」で試算)でも、夜に充電して昼に使うピークシフトは、ロスを差し引くとほぼトントン〜わずかにマイナス。バッテリーの消耗分まで入れると、さらに合いません
- つまり価値の中心は電気代の節約ではなく、「停電時に家電を動かせる」という備えのほうです。日常使いは、その備えの“ついで”として捉えるのが計算に合います
計算方法|単価31円/kWh、効率は片道0.85を仮定
電気料金単価は「目安単価31円/kWh」を使う
電気料金は契約プランで異なります。本記事では、家電製品のカタログ等で広く使われる目安として、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が定める電力料金目安単価 31円/kWh(税込) を使います(令和4年7月22日改定、同協議会Q&Aで確認)。実際の請求は燃料費調整額や再エネ賦課金などで上下するため、自宅の単価で計算し直したい場合は、検針票や契約プランの単価に置き換えてください。
充電にも放電にもロスがある
ポータブル電源の電気は、2回変換を通ります。
- 充電: コンセントの交流を直流に変換してバッテリーに蓄える(ここでロス)
- 放電: バッテリーの直流を交流に戻して家電を動かす(ここでもロス)
本記事では、充電効率・放電効率をどちらも 0.85と仮定 します。放電側の0.85は、当サイトの使用時間計算で使っている推定係数(変換ロスなどを見込んだ当サイト独自の係数)と同じ値です。充電側の0.85も当サイトの仮定で、メーカーの保証値ではありません。往復では 0.85 × 0.85 = 約0.72、つまりコンセントから入れた電気の約72%が家電側で使える計算になります。
計算方法について
本記事の金額は、電気料金単価31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価)と、充電効率・放電効率をいずれも0.85とする仮定で計算した目安です。効率0.85は当サイトの推定値で、メーカーの保証値ではありません。実際のロスは機種・出力の大きさ・気温・バッテリーの使用年数で変わります。ロスがこれより大きい機種では、実効単価はさらに上がります。
表1|満充電にかかる電気代(容量帯別)
蓄える電気は「容量 ÷ 充電効率0.85」の分だけコンセントから入れる必要があります。その購入金額が満充電のコストです。
| 容量帯・機種 | 容量 | 充電に必要な電力量(容量÷0.85) | 満充電の電気代(31円/kWh) | 実際に使える量(容量×0.85) |
|---|---|---|---|---|
| 約500Wh|Jackery 500 New | 512Wh | 約0.60kWh | 約19円 | 約435Wh |
| 約1,000Wh|EcoFlow DELTA 3 Plus | 1,024Wh | 約1.20kWh | 約37円 | 約870Wh |
| 約1,000Wh|Jackery 1000 New | 1,070Wh | 約1.26kWh | 約39円 | 約910Wh |
| 約2,000Wh|Jackery 2000 New V2 | 2,048Wh | 約2.41kWh | 約75円 | 約1,741Wh |
見方を変えると、停電に備えて満充電のまま置いておくコストは、1回あたり数十円の規模です。「備えとして充電しておく」こと自体の電気代は、大きな負担ではありません。問題になるのは、この電気を日常的に「節約のため」に回す場合です。
おすすめ機種|価格と向いている使い方
| 機種 | 価格(税込) | こんな人向け | 主な弱点・注意点 |
|---|---|---|---|
| Jackery ポータブル電源 500 New | 69,800円 | 最小構成。電気毛布と照明・スマホ充電だけ確保したい人 | 定格500Wのため、こたつ(最大600W)など大きめの家電は対象外 |
| EcoFlow DELTA 3 Plus | 149,600円 | 充電の速さ(満充電56分)と切替10ms未満を重視する人 | 1,000Wh帯の中では価格が高め |
| Jackery ポータブル電源 1000 New | 119,800円 | 価格と容量のバランスで選ぶ標準の1台 | 切替は20ms未満で、10ms未満の機種よりは遅い |
| Jackery ポータブル電源 2000 New V2 | 199,800円 | 冷蔵庫に加えて消費電力の大きい家電も回したい人 | 18.6kgと持ち運びには重い |
| Anker Solix C2000 Gen 2 | 229,900円 | 長期保管と寿命(サイクル維持率)を重視する人 | 単ポート最大1,500Wの制約あり。価格も高め |
| EcoFlow DELTA 3 Max Plus | 262,570円 | 定格出力3,000Wで大物家電まで使いたい人 | 22.1kgと最重量級で、価格も最高額帯 |
価格は2026年10月時点・公式ストア調べ(税込)です。
実効単価で見る|ポータブル電源経由の電気は約43円/kWh
満充電のコストを「実際に使える量」で割ると、ポータブル電源から取り出した電気1kWhあたりの値段(実効単価)が出ます。
実効単価 = 31円 ÷(0.85 × 0.85)≒ 約43円/kWh
コンセントから直接家電を動かせば31円/kWhですから、経由するだけで約1.4倍になります。具体例で見ると、家電を合計1kWh分動かす場合:
- コンセントから直接: 1kWh × 31円 = 31円
- ポータブル電源経由: 充電に約1.38kWh分(約43円)の購入が必要 = 約43円
差は1kWhあたり約12円です。小さく見えますが、毎日回すと積み上がります。約1,000Wh帯(DELTA 3 Plus)を毎日満充電→使い切る使い方を1か月(30日)続けると、充電の電気代は約1,120円。同じ量の電気をコンセントから直接使えば約809円で、差額は 月に約311円の払いすぎ という計算です。「節電のつもりが、ロスの分だけ余分に払っている」状態になります。
見落としやすい費用|バッテリーの消耗分
電気代とは別に、充電と放電を繰り返すたびバッテリーは消耗します。乱暴な割り算ですが、本体価格を公表サイクル数で割ると、1回の満充電サイクルあたりの“消耗分”の目安が出ます。
| 機種 | 本体価格(2026年10月24日時点) | 公表サイクル数 | 1サイクルあたりの消耗分の目安 | 使い切れる電気の価値(直接使用換算) |
|---|---|---|---|---|
| Jackery 500 New | 69,800円 | 4,000回以上 | 約17円 | 約13.5円(435Wh×31円) |
| Jackery 1000 New | 119,800円 | 4,000回 | 約30円 | 約28円(910Wh×31円) |
| EcoFlow DELTA 3 Plus | 149,600円 | 4,000回 | 約37円 | 約27円(870Wh×31円) |
| Jackery 2000 New V2 | 199,800円 | 4,000回 | 約50円 | 約54円(1,741Wh×31円) |
500Wh〜1,000Wh帯では、1サイクルの消耗分が、その電気をコンセントから直接買う価値とほぼ同額〜それ以上です。つまり「浮かせた電気代」で消耗分を取り返す構造には、そもそもなりにくいわけです。なお、この割り算は容量維持率(サイクル数は「容量80%以上維持」等の条件付き公表)を無視した単純計算で、実際の寿命は使い方や保管状態で大きく変わります。目安として見てください。
ピークシフトの試算|夜に充電して昼に使うとどうなるか
では、夜間の単価が安い時間帯別プランなら話は変わるのでしょうか。実在のプランとして、東京電力エナジーパートナーの「夜トク8」で試算します(料金は同社の電気需給約款に記載の単価、税込)。
| 夜トク8の電力量料金 | 単価 |
|---|---|
| 昼間時間(午前7時〜午後11時) | 42.65円/kWh |
| 夜間時間(午後11時〜翌午前7時) | 31.69円/kWh |
約1,000Wh帯(容量1,024Wh)を夜間に満充電し、昼間に使い切るケース:
- 夜間の充電コスト: 約1.20kWh × 31.69円= 約38.1円
- 昼間に買わずに済む電気: 約0.87kWh × 42.65円 = 約37.1円
- 差し引き: 約1.0円のマイナス(1サイクルあたり)
夜間の電気を昼の単価に換算し直すと、実効単価は 31.69 ÷ 0.72 ≒ 約43.8円/kWh で、昼間単価42.65円を上回ります。単価差(約11円/kWh)が変換ロス(約28%)に吸収されて消える、という構図です。このプランと効率の組み合わせでは、損益が分かれる夜間単価は約30.8円/kWh(昼間単価42.65円 × 0.72)で、夜トク8の31.69円はわずかに届きません。さらに前章の消耗分(約30〜37円/サイクル)を入れると、仮に電気代で数円浮くプランでも、消耗分で相殺される計算になります。
注意点として、時間帯別プランは家全体の料金体系です。夜トク8は昼間単価が一般的な従量電灯より高めに設定されているため、ポータブル電源の充電のためだけにプランを変えると、昼間の他の電気使用分で逆に高くなる可能性があります。プラン変更は家庭全体の使用パターンで判断する話で、この記事の試算は「ポータブル電源のピークシフト単体では合いにくい」という範囲の結論です。
ソーラーで充電する場合は話が別
ここまでの計算は「コンセントの電気を買って充電する」前提です。ソーラーパネルで充電する場合は購入する電気そのものがゼロになるため、実効単価の考え方が変わります。ただし、パネル自体の購入費用と、1日に発電できる量の上限があるため、「発電した電気はタダ」と単純には言えません。発電量の逆算はソーラーの記事で扱っています。
ポータブル電源にソーラーパネルは意味ある?発電量を数字で逆算する
注意点|効率の仮定で数字は動く
- 効率0.85は仮定です。 小さな出力(スマホ充電など)では変換効率が下がりやすいなど、使い方でロスは変わります。効率が往復0.6の条件では実効単価は約52円/kWhまで上がる計算で、結論の方向(直接使用より割高)は変わりません
- 単価は家庭ごとに異なります。 従量電灯の段数単価や燃料費調整額で実際の単価は上下します。自宅の単価が高い家庭ほど満充電コストは上がりますが、直接使用との比率(約1.4倍)は効率の仮定から来るもので、単価によらずほぼ同じです
- 待機電力・自己消費は入れていません。 電源を入れたままにする使い方では、本体の自己消費の分だけ、さらに不利になります
よくある質問
Q. スマホやルーターだけポータブル電源から給電すれば節電になりますか?
A. 金額の規模が小さいため、節電効果はほぼありません。たとえばルーター10Wを24時間動かす電気は約0.24kWhで、直接使用なら約7.4円/日です。経由すると実効単価が上がる分、むしろ割高になります。停電時も通信を止めないための「備えの接続」と割り切るのが実態に合います。
Q. エアコンを昼にポータブル電源で動かす使い方はどうですか?
A. コスト以前に容量の計算が先です。エアコン(目安900W、室温等で大きく変動)を約2,000Wh帯で動かすと約1.9時間の計算で、長時間の冷房をまかなう規模ではありません。家電別の使用時間は記事①の逆算表を見てください。
ポータブル電源は何時間使える?500Wh・1000Wh・2000Wh別に家電の使用時間を逆算
Q. 日常使いが全くの無駄という意味ですか?
A. そうではありません。コンセントのない場所(庭仕事、車中泊、屋外作業)で使う、停電への備えとして定期的に動かして状態を確認する、といった使い方には電気代以外の意味があります。満充電1回が約19〜75円の規模なので、「備えのついでに使う分」のコストは小さい、というのがこの記事の数字の読み方です。
まとめ
- 満充電の電気代は、約500Wh帯で約19円、約1,000Wh帯で約37〜39円、約2,000Wh帯で約75円(単価31円/kWh、充電効率0.85の仮定)
- 充電と放電のロスで往復効率は約72%になり、ポータブル電源経由の電気の実効単価は約43円/kWh。コンセントからの直接使用(31円/kWh)の約1.4倍です
- 東京電力「夜トク8」でピークシフトを試算しても、ロスを引くとほぼトントン〜わずかにマイナスで、バッテリー消耗分(1サイクル約17〜50円の目安)まで入れると合いません
- 電気代の節約を購入理由にするのは計算が合いにくく、価値は停電時に家電を動かせる備えの側にあります。日常使いは備えの“ついで”と位置づけるのが、数字に沿った整理です
出典(公的データ・電力会社公式・メーカー公表値)
- 電力料金目安単価31円/kWh(税込、令和4年7月22日改定): 公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会「よくある質問 Q&A」Q7(https://www.eftc.or.jp/qa/ )
- 夜トク8の電力量料金(昼間時間42.65円/kWh、夜間時間31.69円/kWh、税込): 東京電力エナジーパートナー 電気需給約款[低圧](https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/agreement/pdf/20240401kantou_k006.pdf )
- 機種の容量・価格・サイクル数: Jackery Japan 公式製品ページ(https://www.jackery.jp/products/explorer-500-new / https://www.jackery.jp/products/explorer-1000-new / https://www.jackery.jp/products/explorer-2000-new )、EcoFlow公式日本ブログ(https://www.ecoflow.com/jp/blog/delta-3-1500-vs-delta-3-plus )
- 家電の消費電力の目安(エアコン900W、Wi-Fiルーター約3W〜10W等): 記事①および当サイトのデータ集(Jackery公式FAQ、EcoFlow公式製品ページの使用例)
※電気料金の単価は2026年11月2日時点の確認値です。料金プランの単価は改定される場合があります。本記事の金額は、効率を仮定した計算上の目安で、実際の請求額とは異なります。
あわせて読みたい: 電気毛布・こたつ・パネルヒーターの電気代はいくら?暖房の月額を数字で比べる